研究概要 |
南関東地域のGPS観測データに基づいて,陸側の北米プレートとその下に沈みこむフィリピン海プレート,太平洋プレートとの間の相互作用の推定を行った.これまで南関東地域のプレート形状は,微小地震の震源分布に基づくプレート境界形状モデルが用いられることが多かったが,最近,南関東地域において大規模な地震学的構造探査が行われ,フィリピン海プレート上面の形状が新たに推定されたことから,その結果を用いて再検討を実施した.新しいプレート形状モデルでは,従来のモデルに比べてプレート上面の深度が20km近く浅くなった地点もある. Sato et al.(2005)が推定したプレート形状モデルを双三次Bスプライン関数の重ね合わせで表現し数値化し,国土地理院のGPS観測網(GEONET)の観測点75点における1996〜2000年の地殻変動速度(3成分)をデータとして,プレート境界面上のすべり欠損分布を推定した. その結果,主要な震源領域になると考えられる20mm/yr以上のすべり欠損領域がプレート境界の深さ15km程度より浅い部分と推定された.この結果は,従来のものと比べて5km程度浅くなっており,大地震発生時の強震動は従来の想定よりも大きくなることが予想される.三浦半島付近には1923年関東地震のアスペリティに対応するすべり欠損分布が見られる一方,房総半島先端の南東沖には1923年で破壊しなかったすべり欠損領域が見られ,この部分の破壊の有無がいわゆる大正型と元禄型の関東地震の違いを特徴付けるものと考えられる.すべり欠損量はプレートの深度が浅くなった分小さくなり,プレートの相対運動速度と比較してより妥当な値になったと言える.
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