地震は急激な断層運動で起こるが、その断層の向き・大きさやすべりの時空間分布など、起こり方は決して単純ではない。地震の起こり方が何で決まるのかを理解するには、多くの事例に対して、同じ手法で導かれた震源モデルの解析結果を蓄積することが重要である。近年、世界各地で設置が進んでいる地域的規模の広帯域地震観測網のデータには、遠地データでは検出しにくい地震の震源特性の情報が含まれる。遠地の記録に比べ、より小さな地震の震源特性を調べることもできる。本研究では、そのような地域的な地震波形データを使用して系統的な震源モデル解析を推し進めるために、地震の震源パラメタ(震源メカニズム解、すべりの方位特性・時空間分布など)を容易に推定できる解析プログラムを開発した。チリ、トルコ、パキスタン等の地震の解析に適用され、震源メカニズム解、すべり時空間分布、応力降下量、応力場などを導くことに成功した。最終的なテストは、2005年チリ北部で発生したやや深い地震について行った。この地震の震動は、チリ大学所有の5台の加速度強震計により震央距離300km以内で記録され、本解析プログラムを日本国外で試す絶好の機会となった。内部速度構造モデルの不確定さが解析上の問題となったが、震源再決定の操作を加えることで、簡便に、効率的に問題を取り除くことに成功した。この改良により、世界に多く存在するだろう、速度モデルが確立されていない地域においても、本開発プログラムがより確実に解をもたらすことが期待できる。トルコ、パキスタンでは、少ない広帯域地震計の記録から、小さな地震の震源メカニズム解を決定、その解は応力場の推定に使われた。本研究で完成した解析プログラムは、英文操作説明書とともに希望者に配布している。今後の地震への更なる適用により、全世界における系統的な地震の震源情報の取得・蓄積が期待される。
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