研究概要 |
中華民国台湾省(台湾)の主要な構造線の一つである花東縦谷北端周辺域において,屈折法地震探査による地下構造調査を実施した.この花東縦谷は,フィリピン海プレートとユーラシアプレートの衝突境界に位置していると考えられており,この地域のテクトニクスを考える上で大変重要な場所である.花東縦谷に境される海岸山脈・中央山脈の地域では,圧縮作用の影響により海岸山脈が隆起し,地震が多発するという地質上の特徴も有している.しかし,この地域における詳しい地下速度構造分布の調査があまり行われていないため,花東縦谷北端周辺域で行われている採石発破を利用し,屈折法地震探査を実施することにより,地下構造モデルを構築することを試みた。 本研究で明らかになったことを以下にまとめる。 (1)中央山脈側で決められた速度構造モデルから,表層の速度は4.8km/secである.これは一般的な堆積層(例えば砂礫層やシルト層)と比較すると大変早い.第三紀の蛇紋岩・黒色片岩などを主体とした地層と推察される. (2)第2層目の速度は,5.8km/secとした.これは,典型的な花崗岩質層と解釈することができる. (3)第3層については,その層からの屈折波を確認することはできなかった.これは,第3層の境界面が相当深いことを推測することができる. (4)海岸山脈側で得られた結果は,片走時であるため確定的ではないが,第2層の見かけ速度が6.42km/secと早く,中央山脈付近の結果とは明らかに異なる.これが真の速度v_2ならば海洋性地殻の存在が示唆される. (5)本研究結果では,第2層を形成する花崗岩質層の上面が約2km程度と大変浅い.この結果は,他の研究結果による一般的な解釈と比較すると明らかに深さが一致せず,大差があることが分かった.
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