研究課題
基盤研究(C)
太陽系外の惑星に生物の存在できる環境がどれほどあるかは興味深い問題である。生物生存可能条件の指標に水の存在がある。暴走温室効果は、惑星が水を失うに至る機構として、生存可能惑星の軌道半径の下限を与える。すでに暴走温室効果発生は一次元の放射対流平衡モデルで詳しい研究があるが、従来の研究は、一次元無限量の水で考えていた点に問題があり、3次元有限水量系では暴走温室効果が発生しない可能性が想定された。本年度の成果は以下の通り:1.気候システム研究センターと国立環境科学研究所が共同開発してきた大気大循環モデルCCSR/NIES AGCM 5.4gを使用して、有限水量を与えて太陽放射を増大させる実験を行い、全ての水が蒸発する限界放射(完全蒸発限界)の値を求めた。2.水の分布が大気循環で規定される場合には、完全蒸発限界は与えた水の量に依らず、暴走条件(射出限界)より大きいことを確認した。3.射出限界以上で完全蒸発限界以下の大気は多重平衡状態にあり、全ての水が蒸発した状態から太陽放射を減少させる場合には暴走状態にある。4.完全蒸発限界以下で、液体の水が高緯度に存在する状況では、大気上層の水蒸気量は非常に小さく、したがって宇宙空間への水の散逸も小さい。依ってこの状態は数十億年以上安定である。5.水の分布が大気循環で規定される場合は、水の総量が少ないときに起こりやすい。従来から、もともと水が多い天体ほど液体の水の安定領域は広いと考えられていたが、むしろ水の総量が少ない方が安定領域は広いと考えられる。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
Proceedings of ISAS Lunar and Planetary Symposium 38
ページ: 56-59
Proceedings of the 38th ISAS Lunar and Planetary Symposium (Kato, M. and S.Tanaka) (Japan Aerospace Exploration Agency, Sagamihara) 56-59