研究概要 |
本研究では,琵琶湖に流入する主要な河川を対象として,水文・水質観測を継続実施するとともに,琵琶湖の水質や湖流を連続的に測定することによって,河川水の水質・流量の季節変化,河口域及び湖内における河川水の分散過程,さらには河川によってもたらされる溶存・懸濁物質の挙動について定量的な把握を行った。 特に,琵琶湖に流入する河川水の中で最大の流域面積を有する野洲川の河口域を対象として,水質プロファイラ(クロロテック)による水温・電導度・濁度・クロロフィルa,溶存酸素の三次元分布を測定するとともに,自記流向流速水質計,自記濁度計などの係留系を展開し,現在稼働中であるテレメータブイ(気象・水質・湖流)の連続記録と併せて,物質の動きを時間的に連続して追跡した。17年度の主な成果は以下の通りである。 野洲川は,上流では比較的水質は良好であるが,支流の「思川」の汚染の影響で,それよりも下流では水質が悪化し,結果としてびわ湖に流入する野洲川河川水はびわ湖よりも高電気伝導度となる。思川では周辺の工場群から温排水が流入していて,水質の空間分布や季節変化については今後精密な調査が必要である。 年間を通した河口沖での水質モニタリングによって,野洲川河川水の分散について考察した。春季には河川水が湖水よりも高温であることが多く,河川水は湖面を広がるように流入し,河口沖で扇状に分散する。一方,夏季から冬季には水温躍層や底層に沿って河川水は流入し,この場合には河軸の延長方向ではなく,やや右側にずれて移動する傾向があり,密度流に作用するコリオリカが無視できないことを意味している。 17年度にはまとまった降水がなく,洪水による湖への影響については十分な調査が実施できなかったが,強風による河川水の連行や,びわ湖深層水の湧昇などについて新たな知見を得ることができた。
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