1.米国の国立環境予報センター/米国気象局(NCEP/NCAR)の編纂した再解析データをモデル駆動力として用い、北太平洋の海洋大循環数値シミュレーションを1948年から2000年までの期間おこなった。モデルの空間分析能は(0.25゜×0.25゜)で、日平均風応力(NCEP/NCAR)を用いモデル内の風応力を毎日変化させ数値積分を行った。モデルで再現された黒潮流量は、太平洋上の風応力から準地衡渦度方程式を用い導出した流量とよく一致することが分かった。2から3年の時間スケールで現れる経年の流量変動は、日付変更線より西の風応力の変動から説明できた。また、1990年代では西太平洋においてモデル再現性が悪かった。この傾向は他の研究者からも報告されているが、原因はその期間のモデル中のロスビー波の伝播速度がTOPEX/POSEIDON人工衛星の海面高度データ解析より求めた伝播速度よりも早くなっている事にあった。 2.基本場の傾圧成分と傾圧波動との相互作用を調べる目的で、試験実験として矩形海洋を想定し基本場に南北温度傾度がある場合と無い場合のロスビー波の伝播特性について考察した。Killworth et al.(1997)が準地衡方程式から理論的に予測したように、大循環モデルにおいても波動伝播速度が南北傾度の存在によって速まることが確かめられた。β平面近似した座標を用いて計算したため、正弦波の振幅(応答)は媒質の局所的特性に大きく依存していた。この結果は、ロスビー波の伝播に伴う気候変動にも関連して重要であるので、球面座標においても同様の現象が再現できるのか今後の課題である。
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