大気・海洋境界近傍には風による剪断応力や温度差による浮力を駆動力とする対流が活発な混合層が生じる。浮力を駆動力とする混合層の発達過程とその乱流特性について調べた。特に、安定成層している状態から発達したときの特性について、回流水槽を用いた実験的方法と数値計算によるシミュレーションを行った。 1.水槽による実験の結果 水槽の水面近くに高さ20cmの3段に分かれたヒータを配して加熱し、鉛直下向きにほぼ線形に減少する安定成層を得た。電解沈殿法により鉛直断面内を可視化したところ、水面近傍で発生した乱れは水面下およそ15cmより下方には沈降せず横に広がっていった。下方に温度の低い逆転層がある状況を確認した。温度の変動は水面で最大値を取り下方に行くにつれ減少するが、逆転層の付近で極大を示した。速度変動は水面近傍で大きな値を取り、成層していないときより緩やかに減少した。乱流熱輸送は逆転層の付近で正の値とった。これは、熱流の向きが水面に向かって流れる混合層中の向きとは逆向きになっていること(逆勾配拡散)を示しており、成層していないときと比べ顕著な違いを示した。 2.数値計算の結果と実験の比較 計算はブシネスク近似をしたナビエ・ストークス方程式を直接解いた(DNS)。計算格子は矩形格子を用いた。境界条件として、水面の温度を一定にした場合と、水面での熱輸送量を一定にし場合を検討した。変動の統計量について実験と比較した。その結果、乱れの強度と鉛直分布について、強度および変化の傾向とも概ね良い一致を見た。しかしながら、逆転層付近の温度変動の極大は実験よりも顕著に現れた。また、乱流熱輸送に関しても逆転層付近で顕著な正の値を示した。境界条件による違いは、水面近傍に於ける乱れの組織構造(ロール状構造)に現れたが、混合層中の乱流統計量には境界条件による差は認められなかった。
|