研究概要 |
短波海洋レーダによって,波浪スペクトルの推定が可能である。しかし,二次散乱を使うため,海流の観測可能域に比べて,波浪スペクトルの推定可能域ははるかに小さい。そこで短波海洋レーダから得られたドップラスペクトルデータを波浪スペクトルのエネルギー平衡方程式に周化することによって,一基のレーダから波浪スペクトルを推定する手法を開発した。海洋レーダはビーム方向を走査することによってドップラスペクトルを,レーダを中心とした極座標格子点上に得る、そのため,拘束条件として,その極座標格子点上における(1)「一次散乱と波浪スペクトルの関係式」,(2)「二次散乱と波浪スペクトルの関係式」に加えて,(3)「時間微分をゼロとしたエネルギー平衡方程式」を用いた。これは,波浪方向スペクトルの移流項とエネルギーソース関数の項で表現される。ソース関数は,風によるエネルギー入力,エネルギーの消散,四波共鳴の和として表される。これらのパラメータ化はWAM-Cycle 3と同様なものを絹いた。海上風速・風向について,拘束条件として(3)に加えて,(4)「二次元の連続の式」を用いた。さらに(5)波浪方向スペクトルが周波数及び方向に対して滑らかに変化する」(6)「波浪スペクトルの空間変化が小さい」という条件を加える。これらの条件の重み付き二乗和として表した評価関数の最小値となるように波浪スペクトル値及び海上風速・風向値を求める。この手法の妥当性を確認するため,シミュレーション及び実際の観測データによる検証を行った。その結果この手法の妥当であることが示された。
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