国立環境研究所で開発を行ってきたCCSR/NIESナッジング化学輸送モデルの化学計算ルーチンを簡略化し、2.8゜×2.8゜の水平分解能によって、1957年から2002年までの46年間の長期連続計算が国立環境研のスーパーコンピュータ上で可能なように集成を行った。具体的には、化学計算ルーチンで、亜酸化窒素、オゾン、励起状態及び基底状態の酸素原子の光化学種のみを取り扱い、修正チャップマン反応のみでこれらの物質の濃度分布の計算を行うように簡略化した。この光化学簡略化高速モデルで計算された亜酸化窒素分布を、簡略化する前の化学輸送モデルによる計算値と比較したところ、下部成層圏の亜酸化窒素濃度の絶対値はほんの少しだけ高い値となったが、グローバルな空間分布にはほとんど影響がないことが確認された。簡略化する前の化学輸送モデルによる計算結果は、ILASによる1997年の北極城の亜酸化窒素の観測値と比較して、その分布、変動とも観測結果をよく再現していることがすでに確認されている。以上により、開発を行った簡略化高速モデルの妥当性が確認できた。そこで、1957年から2002年までの亜酸化窒素濃度分布の連続計算を行った。 さらに、この計算結果の解析を開始した。北極渦起源の亜酸化窒素低濃度空気と北極渦外の亜酸化窒素高濃度空気の混合過程を定量化するために、下部成層圏の等温位面上の北緯45度以北の領域について、亜酸化窒素がある濃度を示す領域の面積を解析し(Probability Distribution Function、PDF解析)、この面積の時間変動の計算を行った。
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