研究概要 |
本研究の目的は、オーロラ領域へのマッピングが非常に難しいとされてきた夜側磁気圏領域全体に対するマッピングモデルを作成することである。重要な点は磁力線モデルを用いる既存のマッピング方法ではなく、電離層高度と磁気圏高度の両側で観測される特徴的構造を用いる新しいマッピング方法を提出することであった。その新しい方法に必要な特徴的な構造を、H16年度後半までの研究により見出し、その性質を解析し、論文として発表した(論文1、2)。そして、平成16-17年度における研究により、夜側磁気圏領域全体をオーロラ領域へ投影するマッピングモデルを完成させることにほぼ成功し、その成果を論文として発表した(論文3,4)。これらの研究の成果は以下のようにまとめられる。 1.地磁気静穏時の夜側磁気圏全体に対するマッピング・モデルを提出した。このモデルは次の二つの意味で非常に新しいものであった。第一に、このマッピングの方法が今までのように地磁気モデルに基づいていないということである。そのために地球磁場モデルへの依存性がない。第二に、夜側全体を投影しているということである。特に難しい双極子領域から尾部領域への遷移領域の投影(マッピング)にも成功した。 2.地磁気擾乱時については、夜側磁気圏全体ではなく地球近傍領域に対するマッピングモデルしか作ることができなかった。その理由は、本研究のマッピング方法で重要な役割を果たす「地球近傍磁気圏境界」が地磁気擾乱時にはっきりと同定できないことが多かったためである。そのため鍵となる9-15Re領域の投影の信頼性が地磁気擾乱時に対し十分とはならなかった。 このように本研究の目的は地磁気静穏時について達成でき、その意味では成功した。しかし、地磁気擾乱時については未完成であり課題を残している。それゆえ、今後も本研究を継続・遂行し、モデルを完全なものへと発展させていく予定である。
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