研究課題
今年度は造山帯レルゾライト岩体に記録された情報からマフィック岩を包有する不均質なリソスフェアマントルの部分融解プロセスを解読することを目的に研究を遂行した。(1)北海道日高変成帯の幌満かんらん岩体に胚胎するマフィック岩の産状を平成16年8月の現地地質調査で詳細に検討した。その結果、岩体上部に未分化マントルの組成よりも肥沃な斜長石レルゾライトが存在することが判明した。これらは、マントルかんらん岩とマフィック岩のセンチメートル規模の互層から形成されており、大陸縁リソスフェアマントルにおけるマントルとメルトの部分融解と反応の結果であることが判明した。次年度はこれらの岩石の化学分析を実施し、成因について詳細な検討をおこなう。(2)海洋性マントルの部分融解による化学的不均質性の形成過程を検討するために、平成16年12月〜平成17年1月にかけて中東オマーンオフィオライトの現地調査を実施した。現地調査に先立ち、過去の調査で採取した岩石のEPMA分析によって従来知られている海洋性マントルのかんらん岩よりも枯渇度の高い領域が数キロメートル規模でパッチ状に分布することが判明した。現地でそれらの枯渇域の調査を実施した結果、これらの地域にはいずれも鞘状のクロマイトの濃集(クロマイトポッド)が確認され、枯渇域の形成とクロマイトポッドの生成が何らかの関係を持つことが判明した。次年度は、鞘状のクロマイトの化学分析を実施し、それらの成因について検討を進める。また、マントルかんらん岩の希土類元素の含有量をICP-MSを用いて分析した。枯渇度の高い領域に分布するかんらん岩は周囲のものよりも重希土類元素に枯渇するにもかかわらず軽希土類元素に富むことが判明した。これらは、枯渇領域の形成に流体の関与していたことを示している。今後は、それら流体の由来について検討を継続する。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (1件)
Proceedings of the Ocean Drilling Program, Initial Reports 209
ページ: 1-139