研究概要 |
本研究では,幌満かんらん岩体に胚胎するマフィック岩の野外の産状と主成分・微量元素(希土類元素とHFS元素)の分布をセンチメートルオーダーで詳細に検討し、過去8千年前のアセノスフェアの上昇に伴い,幌満岩体のマフィック岩がどのように部分融解し、生成したメルトがどのように母岩のかんらん岩と反応したのか、一連のプロセスを明らかにすることを第1の目的とした。 本研究の結果、幌満かんらん岩体のType Iマフィックグラニュライトは約8千万年前に再溶融のイベントを経た可能性が明らかとなった。マフィックレイヤーの中心部はガーネット単斜輝岩に相当し、周縁部はそれと平衡にある未分化な玄武岩質メルトと推定される。両者とも幌満岩体の上昇過程で変成し、マフィックグラニュライトに変化したと考えられる。 次に、海洋性マントルの部分融解による化学的不均質性の形成過程を検討するために、平成16年12月〜平成17年1月にかけて中東オマーンオフィオライトの現地調査を実施した。採取した試料を用いて詳細な鉱物化学組成の広域的分布を検討した結果、高枯渇度の領域は、海洋リソスフェリックマントルの再溶融の融け残りである可能性が判明した。これらは、マントルセクションを斜行する剪断帯に沿っており、剪断帯の形成に伴う流体の通過とそれに伴うマントルかんらん岩のソリダス温度の低下によって再溶融したものと考えられる。 海洋性マントルの直接観察として、国際深海掘削計画第209次航海で得られたかんらん岩試料を用いて、海洋性マントルの不均質性とそれをもたらしたプロセスの検討も行った。ODP Leg 209は大西洋中央海嶺15°20″断裂帯を挟む北緯14°〜16°付近に露出するマントルかんらん岩をSite1268〜1275の8サイトで掘削した。Site1271,Hole Bから得られた岩石の鏡下組織と鉱物化学組成に基づき最上部マントルにおけるメルトの流動とメルト-マントル反応について考察した結果、Hole 1271Bのimpregnated dunite、カンラン石ガブロ/ガブロノーライト/トロクトライトが、ダナイトと苦鉄質メルトの混成岩として形成したことが明らかになった。
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