研究概要 |
1.美濃帯美濃地域に広域的に分布するジュラ紀-白亜紀最前期付加コンプレックス中のメランジュ組織を解析した.各地のメランジュ中には剪断変形組織が認められる.各露頭で得られる剪断方向は異なるが,後生的なプランジした褶曲や広域的な屈曲構造を元に東して復元すると一定方向に揃う傾向が認められた,その剪断方向は,メランジュ形成当時のプレート収束方向を反映している. 2.美濃地域の付加ユニット,左門岳ユニットに焦点をあてて地質構造を解析した.その結果,このユニット中には,従来報告されていなかった露頭規模から地質図規模までの急〜鉛直軸を持つ屈曲構造が発達し,それによって複雑な地質構造が形成されていることが明らかになった. 3.屈曲構造解析の基礎データとなる美濃帯付加ユニットの続成-変成度を,イライト結晶度を用いて広域的に検討した.その結果,すべての付加ユニットは続成帯に属し,そのうち左門岳ユニットは,他の付加ユニットに比べて有為に続成度が弱いことが明らかになった. 4.赤石山地北部の四万十帯・秩父帯を調査した結果,北西-南東方向の糸魚川-静岡構造線はこれらの地層の構造を大きく斜断し,構造線近傍においても引きずり等の屈曲現象をほとんど伴っていないことが明らかになった. 5.糸魚川-静岡構造線の調査の過程で,同構造線の活断層系の一つである下円井断層において,シュードタキライトを見出し,その産状を記載した.さらにこのシュードタキライトは地下浅所において,主として粉砕作用によって形成されたものであることを議論した. 6.屈曲構造を議論するための基礎データとして,赤石山地南部の四万十帯犬居メランジュに発達する石英脈中の流体包有物を解析し,メランジュ形成中と形成後の温度・圧力条件を見積もった結果をまとめた.
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