研究概要 |
1.前年度に解析した美濃地域のジュラ紀〜白亜紀最前期の付加コンプレックス中のメランジュ組織について,さらに広域的な調査を行い,屈曲構造が剪断変形組織の方位解析に与える影響等の議論をより詳細なものとした.その中で金山ユニットについての結果をまとめて,国際誌に論文を投稿した. 2.昨年度に引き続き,美濃地域北部の付加ユニットである左門岳ユニットについての郡上値域での調査を続け,地質構造を解析した.その結果,活断層である八幡断層を境として,左門岳ユニットの構造は異なり,断層の東側では北西-南東〜北北東-南南西方向の比較的単純な構造をとるが,断層の西側ではkmオーダーの複雑な屈曲構造を持つことが明らかとなった.すなわち,八幡断層は地質構造の境界部に形成され,活断層として再活動をおこなっていることが示された. 3.従来地質構造の解析が不十分であった美濃帯南部養老山地の調査を開始した.この山地の美濃帯は大略,島弧方向とは直交する南北の走向を持ち,その地質構造の形成には鉛直軸回転が影響している可能性がある.この地域については,今後調査を継続していく. 4.昨年度に引き続き美濃帯付加ユニットの続成-弱変成度を,イライト結晶度を用いて広域的に検討した.その結果データ量はほぼ倍増し,すべての付加ユニットは続成帯に属し,他の付加ユニットに比べて左門岳ユニットの続成度が弱く,これを除けば美濃帯の大半は有為な差のない古地温構造を示すことが明らかになった.すなわち,屈曲構造は温度構造の差を表現するほどの上下方向の変位を生じさせていない. 5.今までの調査結果と既存の資料をふまえて,中部地方における屈曲構造の全体像および,屈曲構造と活断層との関わり,糸魚川-静岡構造線の形成との関係などについて,分担執筆した図書である日本地方地質誌「中部地方」のなかで平易にまとめた.
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