琵琶湖で採取された高島沖ボーリングコア試料の分析結果と彦根測候所の気象データとの相関を明らかにする目的で、琵琶湖内の4ケ所においてにおいて採取した柱状試料について各種分析を進めている。 各試料について、鉛-210の深度毎の濃度分布を測定し堆積速度を求めた。 測候所の各種測定値と深度軸を年代軸に変換させた各種分析値との相関を求めた結果、堆積物密度と年間平均気温または5月の平均気温との対応が最もよいことが明らかになった。さらに冬季の平均風速との相関もよいことが明らかになった。 湖底堆積物の密度が示す内容としては、生物源シリカ濃度との相関がよいこと、スメアスライド観察の結果、低密度の堆積物には珪藻殻が多く観察され、高密度の堆積物には珪藻殻が多くないことから珪藻の増減と関係していることが明らかにされている。そこで作業仮説として、以下のようなモデルを考えている。 琵琶湖は平均気温が高い年には内部生産が活発であり、植物プランクトンである珪藻の生産性が高い。このときの堆積物は低密度を示す。冬季に平均風速が速い時期には大陸から多くの風成塵が供給される。風成塵の主体は鉱物粒子であり、風成塵の多い堆積物は密度が高い。 現在、表層堆積物の分析結果と測器データとの対応を究明しているが、同時に高島沖試料の検討も進めている。また、バイカル湖や中国岱海湖の分析結果も検討しており、最終的には表層部で解明された結果をもとに掘削試料のデータの解析も進むはずである。 研究成果は、2つの査読論文として発表された。
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