<ヒマラヤ変成帯の研究> ヒマラヤ山脈北西部の地質学的・岩石学的研究を行い、同地域のヒマラヤ変成帯は、コーズ石を含む超高圧変成岩体の上下を比較的低圧の岩体が挟むような温度-圧力構造であることを明らかにした。焦点画像合成システム(本研究費により16年度に導入)を用いて、超高圧エクロジャイトの顕微鏡観察を行い、特異な形態のジルコンを発見した(以下、顕微鏡観察にはすべて本システムを使用)。エクロジャイトの化学組成ならびにジルコンなどを用いた同位体年代測定の結果(岡山大学地球物質科学研究センターの共同利用研究による)にもとづいて、エクロジャイトの起源である玄武岩質火成活動が少なくとも3回(約267Ma、約180Ma、および約114Ma)あったことが推測できた。 <ルオブサオフィオライトの研究> チベット南部(ヒマラヤ山脈の北側)のルオブサオフィオライトのカンラン岩体から、超高圧の指標鉱物であるダイヤモンドなどの産出が報告されている。カンラン岩体とその周囲についての既存の地質調査データと、岩石試料の顕微鏡観察結果を総合して、このオフィオライトと周辺の地質ユニットが、全体として逆転した覆瓦状構造を構成することを明らかにした。 <幌満カンラン岩体の研究> 北海道中央南部の幌満カンラン岩体は、日高衝突帯の形成過程にマントルから分離したと考えられているので、岩体周辺には高温高圧条件で形成された変成岩の存在が期待できる。カンラン岩体とその周囲の地質調査を行い、北東部、南部、東部の数地点においてカンラン岩類と片麻岩類の境界の位置を決定し、境界周辺の変形構造を解析した。岩体の西部では、カンラン岩類と堆積岩類との境界の位置を2地点で決定決定し、境界周辺の変形構造を解析した。調査結果と定方位岩石試料の顕微鏡観察結果を総合すると、幌満カンラン岩体は全体として西に衝上して堆積岩類の上に定置したと推察される。
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