研究概要 |
平成18年度は研究計画の最終年度に辺り,以下の2項目の検討を行った. (1)津波の発生と土砂移動の実験 山体崩壊によって発生する津波の再現と沿岸土砂移動に関する模擬実験を実施した.実験に用いた水路は筑波大学水理実験センターから借用し,波動は土砂を流入させることによって発生させた.この水理実験により波高5cm,波長1mの津波の発生に成功した.さらに,津波が沿岸域に見立てた斜面において砕波してそのまま斜面を遡上する状況が復元できた.この際,外浜〜海浜に見立てた斜面上に散布した極細粒砂は,波動によって浸食・運搬され,水路から水と一緒に溢れ出た. (2)北海道東部太平洋沿岸域の巨大津波履歴研究 十勝〜根室沿岸では,過去の津波が陸上に残したと考えられる津波堆積物に関する研究が行われている.今冬2月に厚岸町床潭沼において氷上ボーリングを行い7本のコアを採取した.それを詳細に解析した結果,17世紀と13世紀の津波痕跡の下位にも少なくとも2層のイベント堆積物の存在を認識することができた.これらのイベント層序は添田ほか(2004)と整合的であり,厚岸地域は他の道東地域と同様に,400-500年毎に巨大津波の来襲を受けていたと考えるのが妥当であろう. 一方,根室地域においては,2005年11月に根室市のガッカラ浜,フレシマ湿原および南部沼の3地点において津波トレンチ痕跡調査を実施したが,その後の層序学的検討の結果,12層の津波堆積物を認定することができた.これらは広域テフラによって,位置も地形条件も異なる3地点において対比可能であり,このことが砂層の成因を巨大津波に求める最大の論拠といえる.さらに,その発生間隔をテフラとAMS14C年代で検討した結果.300-350年と概算出来た.この数値は,我々が既に報告している十勝海岸〜霧多布間の400-500年という値を有意に下回っており,根室側の方は津波ポテンシャルが高いことが理解できる.
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