研究課題
過去の黒潮の熱の運搬量の変動と、それの気候変動との関連を知るには、温度パラメーターの他に流量を知る必要がある。本研究は黒潮続流により運搬された伊豆小笠原弧起源物質の分布と粒度を調べることで、その運搬過程を推定し、砕屑物の粒度と移動距離からどの程度の流速で側方に運搬されたか推定することを目標とした。本研究の解析に供した試料はCCD以深から採取されたため従来有効である炭酸塩の年代情報を使用出来ない。このため、年代については堆積物に記録された地球磁場強度の変動、および広域火山灰対比を検討し使用した。現在の表層サンプルの粒度分布はどのようになっているのか知るため、表層サンプルの岩石磁気的な粒度を検討した。その結果、伊豆-小笠原東海域の北緯30°付近と北緯33-36°では現在の黒潮流路と一部重なっている33-36°の方が粒度が大きいことが示され、黒潮による運搬が示唆された。地質時代に粒度変動がどのようであったかはを知るために正確な年代をもったコアの岩石磁気学的研究をおこなった。その結果、氷期と間氷期では磁性鉱物の量、種類が大きく違う事が分かった。また堆積物の起源を知るため、全岩の化学組成を検討した。氷期の堆積物は生物源シリカが多く、砕屑物すなわち伊豆-小笠原からの運搬された物質は少なかったと考えられる。間氷期の区間においては磁気的に粒度変化を検討した。その結果、間氷期中は非常に細かな変動が見られ、北大西洋に見られる急激な気候変動を示すパターンと似ている。コア中にみられるこういった変動は、黒潮変動は1次オーダーと2次オーダーがあることを示している。
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JOURNAL OF GEOPHYSICAL RESEARCH 112・B01104
ページ: doi:10.1029/2006JB004477
第四紀研究 45
ページ: 435-450