研究課題/領域番号 |
16540425
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
海保 邦夫 東北大学, 大学院理学研究科, 教授 (00143082)
|
研究分担者 |
斎藤 務 室蘭工業大学, 機械工学科, 教授 (00302224)
浅野 正二 東北大学, 大学院理学研究科, 教授 (00089781)
藤巻 宏和 東北大学, 大学院理学研究科, 教授 (90133933)
|
キーワード | 小天体衝突 / 大量絶滅 / エアロゾル / 硫黄 / ペルム紀 |
研究概要 |
成層圏硫酸エアロゾルが大量に発生すると太陽光をほとんど反射し、光が地上にほとんど届かなくなり、生物の大量絶滅が起こると考えられている。このような状態を最も作りやすいのは、小天体衝突であるので、小天体衝突シミュレーションを行い、成層圏硫酸エアロゾル量を求めた。直径10kmと20kmの小惑星と10kmの彗星の地球の海洋への衝突について行なったが、硫酸エアロゾルの量は、大量絶滅を起こすには少なすぎ、さらに大きな衝突か、硫黄が濃集した場所への衝突が必要である。また、小天体衝突により形成される成層圏硫酸エアロゾルによる太陽光反射後の晴れ上がり時の紫外線量増加現象が衝突の4年後ぐらいに起こることを計算により明らかにし、陸上生物の絶滅に寄与した可能性を示した。 一方、ペルム紀末の史上最大の大量絶滅の原因は、不明であるので、堆積物の多種の化学分析を行なった。その1つとして、ペルム紀末の大量絶滅と硫酸塩硫黄同位体比の減少が同時であることを、中国のペルム紀/三畳紀境界の模式地とヨーロッパの2地点で明らかにした。硫酸塩硫黄同位体比の減少は、海洋深層で形成された硫化水素が大量に海洋表層と大気に放出された可能性が高いことを意味する(Kaiho et al.,2006)。小天体衝突で説明しようとすると、直径70kmの海洋への小惑星衝突、または、硫酸塩濃集層への直径10kmの小惑星衝突が必要になる。シベリア洪水玄武岩の年代は大量絶滅と同年代であるが、大量絶滅に必要な量の成層圏硫酸エアロゾルを作るのは、計算した結果むずかしいことがわかった。また、バイオマーカーにより、ペルム紀末の大量絶滅直前と同時期の2回、海洋貧酸素状態が発達したことを明らかにした。以上のように、ペルム紀末の大量絶滅の原因は、海洋貧酸素と硫黄濃集部への小天体衝突の2つの可能性が高いと考えられる。
|