本年度は、8月にスペイン・オビエド大学で開催された国際石炭系層序委員会Task Groupのワークショップに参加した。その際、ウクライナ・ドネツ炭田地域からのフズリナ標本を持参し、研究者間での検討を行った。それをもとに、主要Moscovian/Kasimovian境界地域、特にMoscovianとKasimovianの模式地のあるモスクワ盆地との対比を行った結果、ドネツ炭田KalinovoセクションのN_2層準がモスクワ盆地のPeski層下部に、原始的なProtriticitesを産するN_3層準がPeski層最上部か、その上位のSuvorovo層の下部に、保存の悪いProtriticites類のみがみられるN_3^3層準がVoskresensk層の恐らく上部に、"Obsoletes"や原始的なTriticites類が産するO_1層準がNevorovo層の中部付近に、進化型のMontiparusが多産するO_2層準がNevorovo層-Perkhurovo層間の堆積間隙に概ね対比できる可能性が確認された。しかしながら、同時にKalinovoセクションではいくつかのキーになる層準において、さらに詳細な調査と追加試料の採集が必要であることが明らかになった。そのため、ドネツ炭田地域において再度精査を行った。この際得られた試料については、現在処理を進めている。 これと平行して、国内のセクションとしては秋吉石灰岩の佐山セクションで得られた既存試料の検討を進めるとともに、新たに南部中国(揚子地塊)大陸縁の炭酸塩プラットフォーム上にある貴州省紫云県宗地セクションにおいて上部石炭系の予備調査を実施した。その際、宗地セクションにはMoscovian/Kasimovian境界前後の層準が連続的に露出し、同時にフズリナ類を多産することを確認した。次年度は、宗地セクションにおいて精査を行う予定である。
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