本年度の当初目標として交付申請書の中で、1)M/K境界の世界的重要セクションであるウクライナ、ドネツ炭田地域のKalinovoセクションのフズリナ群集変遷に関する投稿論文の準備、2)昨年度予備調査を行った、中国貴州省紫云県の宗地セクションにおける精査の実施、3)国内のセクションにおけるデータのまとめと野外調査、4)得られたデータを世界の主要なM/K境界セクションのデータと比較検討、の4項目を掲げた。 1)についてはデータのとりまとめを終え、その結果を8月に全ロシア地質研究所(ロシア・サンクトペテルブルク市)で開催された国際石炭系層序委員会の「M/K境界に関するタスクグループワークショップ」において発表した。現在、公表論文の作成準備を進めている。2)については、4月に現地再調査を行い、M/K境界を含むMoscovian後期〜Gzhelianのセクションを精査した。この調査で、Pennsylvanian(後期石炭紀)の詳細な岩相層序を明らかにすると共に、シーケンス層序学的な観点から海水準変動の解析を行った。この結果、上部Moscovian〜Gzhelianにメータースケールで周期的に繰り返される陸上露出層準を確認し、これをもとに約20の堆積シーケンス(サイクロセム)を認定した。現在、得られた試料からの有孔虫生層序を検討中だが、有孔虫類の出現・消滅とサイクロセムの頻度を用いて、南部中国浅海炭酸塩プラットフォーム相でのより詳細な国際対比が可能になると考えられる。3)に関しては、秋吉石灰岩におけるデータのとりまとめを進めている。4)については、8月のタスクグループワークショップにおいて世界各地のセクション(ロシア、モスクワ盆地:ウクライナ、ドネツ炭田:ノルウェー、スピッツベルゲン島:スペイン、カンタブリカ山脈:アメリカ、ミッドコンチネント地域、など)で得られた有孔虫標本との直接比較を行った。その結果、ユーラシア地域内では従来のM/K境界層準に近い広域的対比可能層準として、Montiparus属の初出層準を用いたことで対比精度が高まるのではないかという点について討議した。
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