研究課題
現在の太平洋のプランクトン珪藻群集は、表層大循環によって分けられた9の海域に棲み分けて分布している。本研究は、プランクトン珪藻が9海域に棲み分けて分布するようになった、1)その過程と、2)海洋表層大循環との関連を明らかにするために計画した。この研究を進めるにあたり、次のような仮説を立てた。すなわち、1)24Maの周南極海流の成立、15Maの亜熱帯循環の形成、2.5Maの亜寒帯循環の形成などによって太平洋の表層水塊が細分化された。2)細分化された水塊のなかで、各水塊独自のプランクトン珪藻群集が形成された。この仮説を検証し、プランクトン珪藻プロビンスの成立・発展・消滅の過程を解明するために、国際深海掘削計画で採取されたコアを用い、本研究を進めている。2年計画の初年度にあたる本年度は次のような作業を行った。1)国際深海掘削計画の微化石標本資料センターに保管されている珪藻化石プレパラートを用いて、化石珪藻の保存状態、コアの連続性の概査を行い、本研究に用いるコアを選択した。2)生存期間が長く、南太洋から高緯度北太平洋まで産出する珪藻Thalassionema属に含まれる種の形態の変遷をたどり、形態学的進化速度の大きく変わる層準(時期)をコア毎に識別するため、現生Thalassionema属数種の形態解析を行った。その結果、Thalassionema属数種の形態の地理的変異と海洋表層水塊分布との間に対応関係のあることが明らかになった。また副次的な成果として、Thalassionema属と共存する石灰質渦鞭毛藻群集の分布においても、群集分布と水塊分布との明らかな対応関係が確認された。
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