研究課題
太平洋のプランクトン珪藻群集は、表層大循環によって分けられた9海域毎に群集組成が異なる。この9プランクトン群集の成立過程と、その過程における海洋表層大循環の役割を明らかにするために本研究を計画し、以下の仮説のもとに研究を進めた。すなわち、1)後期漸新世の周南極海流の成立(24Ma)、中期中新世の亜熱帯循環の形成(15Ma)、鮮新世の亜寒帯循環の形成(2.5Ma)などによって太平洋の表層水塊が細分化された。2)細分化された水塊のなかで、各水塊独自のプランクトン珪藻群集が形成された。この仮説を検証し、プランクトン珪藻プロビンスの成立・発展過程を解明するために、国際深海掘削計画で採取されたコアを用いて本研究を進め、以下の結果を得た。1)生存期間が長く、北太平洋で多産する珪藻Thalassionema属に含まれる6種の変遷史において、少なくとも後期中新世と更新世に大きな変化がある。海洋表層大循環がこの変化の契機となった可能性が高い。2)中新世には低緯度から南大洋にかけて共通する珪藻基準面が見つかるが、T.tetraoestrupiiの初出現(5.5Ma)を最後に鮮新世以降に共通基準面がみあたらない。南大洋ではそれ以後、南大洋固有種が化石基準面を構成する。この結果は、南極半島で認められる南極氷床拡大期とほぼ時を同じくし、周南極海流の強化にともなう南大洋の孤立によって生物地理区が分断されていったことを示唆している。
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Journal of Phycology 42(in press)
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Proceedings of the 18th International Diatom Symposium, Miedzzdroje, Poland. (in press)
Bull.Natn.Sci.Mus., Tokyo, Ser.C 31
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