研究概要 |
本研究では,超高圧高温条件におかれているオリビン(α相)が,高圧状態を保持したままで温度が低下するという過程において,構造相転移を生じリングウッダイト(γ相)を生成しうるかという問題の検証をすすめ,以下の結果を得た. 1.試料を9GPa・10GPa・11GPaの各圧力まで加圧し,その後,1400℃に過熱した.そして,この温度圧力条件を2時間保持した.この2時間の保持によって,加圧過程で試料中に発生した弾性歪及び塑性歪を回復させる事ができた. 2.次に,各圧力・1400℃での2時間の保持の後に,油圧を一定に保つ事で圧力を保持し,温度のみをα相とγ相が共存する領域(700℃・800℃・1000℃)まで下げ,約2-5時間保持した.回収試料の観察の結果,いずれの温度・保持時間においてもγ相の晶出を確認できなかった.この原因として以下の2つの可能性が考えられる. (1)1400℃からの冷却過程において,圧力の降下が生じた.それにより,最終的な温度・圧力条件がα相の安定領域となっていた. (2)γ相の相転移速度が非常に遅かった為に,相転移を確認する事ができなかった. 結晶の相転移速度は実験温度に強く依存する.今回の実験条件の様な比較的低温条件では,相転移が発現するには加熱時間が短すぎた可能性がある(上記bの可能性).従って,より長時間の加熱実験を試みる必要がある.また,相転移圧力境界を越える過剰圧は,相転移を促進させる事が知られている.この事を考慮し,α相とγ相の共存領域での加熱中に,わずかに油圧を増加させ加圧圧力を上昇させて試料に過剰圧を加える事でγ相への相転移を促進できるかもしれない.この油圧の増加の操作は,上記aの可能性の対処にもなる.今後,この様に実験過程を変える事で,圧力一定条件の基での冷却過程におけるα相からγ相への相転移の可能性が議論出来る様になると考えられる.
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