研究概要 |
本研究の目的は,混合ガスハイドレート(ガスハイドレート固溶体)の高圧相について,その諸性質を分子動力学(MD)計算で再現&予言(予測)するとともに,諸性質のあらわれるメカニズムをミクロな原子レベルで考察することにある.構造II型およびFilled Ice構造のCH4+CO2混合ガスハイドレートについて,結晶学的性質(格子定数)および熱力学的性質(モルエンタルピー)の組成依存を,温度圧力一定条件下でのMD計算を行なうことにより調べた.計算の際には,経験的に決められた粒子間ポテンシャル(河村)を使用した.特徴的な結果は以下のとおりである. 1.構造II型のCH4+CO2混合ガスハイドレート (1)格子定数値は2種類のケージ(SケージとLケージ)におけるCO2存在率[=CO2/(CH4+CO2)]に応じて系統的に変化していくが,特に小さいSケージ中の大きなCO2分子の存在率に敏感である. (2)低温(100Kおよび250K)において結晶中のCO2存在率が高くなってくると,CO2分子が自主的に選択配向を起こし,その結果,結晶の対象性が立方晶系から正方晶系に低下する. (3)大きなCO2分子が大きなLケージに優先的に入る構造が,CH4とCO2がSケージとLケージに均等に入った構造よりもエネルギー的に安定である. 2.Filled ice構造のCH4+CO2混合ガスハイドレート この構造では,固溶領域が限られており,結晶中のCO2存在率が約20%以上固溶すると構造が保てなくなる.構造を保っことのできる組成範囲内では,格子定数は組成に応じて系統的に変化していく.
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