高周波誘導加熱式による高温ダイヤモンドアンビルセル(以下DACと略)の開発と、顕微ラマン分光法を用いた高温高圧下での鉱物の顕微ラマン分光システムの確立が本研究費の目的である。高温高圧下での地球構成物質の挙動を研究する際に、高圧発生装置としてDACが広く用いられる。従来DACの加熱方式として、ダイヤモンド近傍に配置したヒータにより加熱する外熱式(主に1000K程度までの温度範囲で用いられる)と、レーザを直接試料室内に照射し試料を直接加熱する内熱式(2000K以上)がある。本申請で開発する高周波誘導加熱による高温発生方法は、DACを用いた研究では従来なされていなかった加熱方法で、外熱式・内熱式の欠点を補い、安定して高い精度で高温(1000から2000K)を発生させうる新しい可能性を持つ。高周波誘導加熱式による高温DACが開発されれば、DACの加熱方法として新しい展開が期待できる。 平成16年度は、高周波誘導加熱電源およびDAC用加熱コイルの製作、高周波誘導加熱に特化したDACの設計製作を行った。また被検試料としてのスティショバイトの合成を岡山大学地球内部研究センターで行った。高周波誘導加熱電源は10kW、加熱用コイルは外径27ミリ、内径15ミリ、厚さ4ミリの1回巻きである。高周波誘導加熱用DACは、3点クランプ式とレバ一式を合わせた加圧機構で、超硬台座のあおり用押さえ板と超硬台座の角度あおりネジがセラミクス製で誘導加熱の影響を受けにくいことと、超硬台座とDAC本体の間にジルコニア製断熱版を配置していることが特徴である。スティショバイトの合成は、岡山大学地球内部研究センターの2000tプレスマルチアンビル高圧発生装置を用いて行った。MgOを圧力媒体とし、ZrO2を断熱材に用い、グラファイトに通電することでヒータとする。粉末SiO2を白金チューブに水とともに溶接封入し、タングステンカーバイドアンビルを用いて、1000℃、10GPaのコーサイトの安定領域で12時間保持し結晶成長を促し、スティショバイトを合成した。
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