高周波誘導加熱式による高温ダイヤモンドアンビルセル(IH-DAC)の開発と、顕微ラマン分光法を用いた高温高圧下での鉱物の顕微ラマン分光システムの確立が本研究費の目的である。高温高圧下での地球構成物質の挙動を研究する際に高圧発生装置としてDACが用いられることが多い。本申請で開発したDACの加熱方法の高周波誘導加熱による高温発生方法は従来なされなかった加熱方法で安定して1300K程度の高温を発生させる可能性を持つ。本申請においては、高周波誘導加熱電源、加熱コイル高周波誘導加熱に特化したDACの設計製作を行った、試料部の測温のために、数種の融点既知物質の融解の直接観察と、シリコンのラマン散乱光のストークス線(I_S)とアンチストークス線(I_<aS>)の強度比からDAC内の試料の温度を直接測定することを試みた。リンカム社製高温ステージを用いてシリコンの試料温度とI_<aS>/I_S比を測定し、試料温度とI_<aS>/I_S比から求められる温度がよい相関を示すことを確認した後、誘導加熱によるDACの昇温時のI_<aS>/I_S比から試料温度を直接測定した。この校正曲線により一般の試料の試料温度の直接測定が可能になる。加熱様式として二つの材料の組み合わせを試した結果、台座をWCで製作しガスケットをφ4のレニウム板を用いる場合の加熱効率が優れ、800℃程度へ容易に昇温できた。従って、誘導加熱による昇温法は台座を加熱する方法が有望である。 単結晶と粉末の石英を出発物質として、石英の高圧相のコーサイトへの相転移をIH-DACを用いて直接観察した。相の同定はラマンスペクトルを用いた。高温高圧下で石英がコーサイトへ相転移する様子が直接観察でき、転移量と転移時間から相転移の機構について考察した。
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