今回対象としている、ナノストレージ材料はカーボンナノチューブである。カーボンナノチューブはその形状を大別すると多層型、単層型のものがあり、それぞれには、端面の閉じたもの、開いたものがある、本年度は多層型カーボンナノチューブについてダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用いて、高圧下で放射光からの強力X線を用いての圧縮実験によるX線回折パターンを解析し、静水圧状態および非静水圧状態での耐圧性能の検討をおこなった。それによると、50GPaまでの圧力下でも、チューブ構造は破壊されることはなく、著しく強靭な耐圧性能を示すことがあきらかとなった。これは、ナノチューブにおける各層のグラフェンシートにおける炭素原子の配列が、チューブ構造の法線方向に対しランダムな配列をとることに起因する。このことは黒鉛が各層間で原子が規則配列し、マルテンサイト転移により、六方晶ダイヤモンド化することと対照的であるといえる。 また、本年度は多層型について、DACを用いてアルゴン中で、レーザー加熱することにより充填を試みた。貯蔵の確認は、試料を減圧回収し、元素分析が可能な走査型電子顕微鏡(SEM-EDS)を用いておこなった。その結果、減圧後もアルゴンがナノチューブ内に貯蔵されていることが少量であるが確認された。しかしながら、その定量性については今後、透過顕微鏡等による解析で明らかにしてゆきたい。 DACにガスと試料を充填する方法としては、ガスを冷却して液体状態にして、注入する方法があるが、その場合、密封して室温に取り出すために、室温での流体の初期圧力より大きな圧力をかける必要があり封入圧を正確にコントロールすることは難しい。本年度は、その機能を有したDACへのガス封入装置(ガス充填チャンバー)の製作もおこなった。
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