本研究で対象としている、ナノストレージ材料はカーボンナノチューブである。高圧流体を貯蔵できるか否かを判断するためには、その材料強度をまず評価することが必要となる。そこで、16年度は多層型カーボンナノチューブについてダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用いて、高圧下で放射光からの強力X線を用いての圧縮実験によるX線回折パターンを解析し、静水圧状態および非静水圧状態での耐圧性能の検討をおこなった。それによると、50GPaまでの圧力下でも、チューブ構造は破壊されることはなく、著しく強靭な耐圧性能を示すことがあきらかとなった。引き続き、アルゴン貯蔵実験をおこなうための、低温下での液体アルゴン充填装置を製作した。本装置を使い多層型ナノチューブをアルゴン中でレーザー加熱することにより充填を試みた。貯蔵の確認は、試料を減圧回収し、元素分析が可能な走査型電子顕微鏡を用いておこなった。その結果、減圧後もアルゴンがナノチューブ内に貯蔵されていることが極少量確認された。17年度は多種にわたるナノチューブに対し、高圧熱間等方圧縮装置(HIP)を用いて、ダイヤモンドアンビルに比較して多量の試料(mg単位)について、3000気圧、800-1000℃といった条件でアルゴン流体中に10時間程度保持する実験を繰り返した。試料は、閉端型および開端型多層カーボンナノチューブ、バンドル型および非バンドル型単層カーボンナノチューブ等である。多層型ナノチューブ内部にアルゴンの検出は極少量であるが、バンドル型単層カーボンナノチューブからは、かなりの量のアルゴンが検出された。以上のことから、チューブもしくはケージ内部にアルゴン流体が大量に貯蔵できるという証拠はなく、バンドルされた単相ナノチューブの隙間、もしくは無定型なsp2構造の隙間に存在することのみが確認された。
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