本研究室では、円筒の金属管にスリットを入れたマイクロ波アンテナを用いて、大気圧下で非平衡プラズマを発生させる装置を開発した。この装置を用いて大気圧下で石英管内(直径20[mm]、長さ300[mm])にほぼ一様な空間分布を持つプラズマを生成した。今年度はまずアンテナの最適化を図るため、スリット本数や直径の異なるアンテナを用いて放電特性を調べた。その結果、スリット本数により放電特性や生成されるプラズマの電子温度等が大きく異なり、今回調べた範囲では4本スリットのアンテナが安定してプラズマを生成できることが分かった。また、マイクロ波電界と放電特性やプラズマの特性との関係を明らかにした。 次に、今年度の経費で購入したパルス変調型マイクロ波電源を用いて、マイクロ波電力をパルス化した時のプラズマへの影響について調べた。実験では平均マイクロ波電力を一定に保ちながらデュティー比やパルス周期等を変化させた。発光分光法により電子温度の変化を調べた結果、パルス変調しデュティー比を低くすることにより電子温度は上昇することが分かった。また、熱電対によりガス温度を測定した結果、電子温度とは逆にデュティー比を低くすることでガス温度は減少することが分かった。デュティー比に対して電子温度とガス温度が逆の傾向を示すことから、非平衡度(電子温度/ガス温度)がデュティー比により制御できることが分かった。更に、パルス周期についても同様の結果が得られた。更にこれらの結果はプローブ法により測定したプラズマパラメータの時間変化により説明できることが分かった。 大気圧非平衡プラズマを材料の表面処理などのプロセスに用いるために、石英管の一端を開放し、プラズマがトーチ状に噴出する装置を試作した。直径19mmで長さ約40mmのトーチ状の非平衡プラズマを大気圧下で生成することができた。
|