研究概要 |
本研究では、誘電体バリア型の高気圧グロー放電生成および維持における準安定原子の役割について、実験と数値シミュレーションの両面から精査した。 実験では、アルゴンガスをベースとした雰囲気中、様々な条件下で誘電体バリア放電を発生させ、このときの電気的特性の計測、放電形態の観測、発光分析、および、レーザ吸収法を用いた準安定原子Ar(1s_5)の密度計測を行った。また、Ar(1s_5)よりも低い電離電圧を有するC_2H_4を微量添加し、ペニング電離がグロー放電生成に与える効果について検証した。更に、グロー放電を用いた廃水処理の可能性についても検証した。 流体近似モデルを用いた数値シミュレーションでは、上記実験と同条件下でのAr/C_2H_4中での放電におけるペニング電離の効果を精査した。また、マイクロプラズマ(共面電極型マイクロプラズマ、及び、直流マイクロプラズマ)におけるプラズマ生成過程と累積電離の寄与を評価した。さらに、偶存電子を起点とした電子なだれからどのようにグロー放電が形成されるか、この過程において準安定原子・分子が担う役割についても検証した。 得られた主たる結論は以下の通りである。 (1)ストリーマを伴う放電へと転移することなく大気圧グロー放電を安定して維持するには、低換算電界域で実効電離係数を上昇させ、できるだけ低い印加電圧で放電させることが重要である。ペニング電離の利用はこの実現に極めて効果的である。C_2H_4,C_2F_4,SiH_4などはアルゴン中でペニング効果が期待でき、実プロセスにも応用可能である。 (2)大気圧マイクロプラズマでは、陽光柱における累積電離の寄与が極めて高い。また、加熱とイオン抗力による強い流れが生じる。 (3)偶存電子を起点として放電がグロー様に成長するには、電子の拡散係数が大きいこと、または、十分な寿命を有する準安定種がある程度の距離を拡散できることが必要な条件となる。
|