核融合科学研究所の基礎実験グループによって観測された台風様渦の形成メカニズムに関する理論構築を行ってきたが、重要な成果をあげた。これまでプラズマにおける渦励起は、E x Bドリフトに起因するものと広く考えられてきたが、E x Bには2種類存在することを明らかにし、台風様渦の発生に関与しているものは今回明らかにした異常E x Bドリフトによることを示した。プラズマの回転に関与する力にはそもそもローレンツ力、ポテンシャル力(圧力を含む)、遠心力があるが、これまで受け入れられてきたE x Bドリフトはポテンシャル力とローレンツ力がバランスするものとして記述され、したがって境界(無限遠)でゼロに収束するものであった。これに対して、異常E x Bドリフトはローレンツ力と遠心力が釣り合うようなものであり、したがって中心部では常に剛体回転をし、無限遠でゼロにはならないものである。もちろん、遠心力が効くほどの回転運動を引き起こすのはポテンシャル力であるが、これまでは遠心力を問題にするほど大きな回転速度をもつプラズマを手に入れていなかったため、無限遠でゼロにならないから物理的でないとして捨てられてきたと思われる。しかし渦励起に伴い渦内部と外部では異なる運動様式が生まれることがあり、このため異常E x Bドリフトが渦中心部で局所的に成立する事によって、矛盾のない理解を定式化することができた。この異常E x Bドリフトが励起される系では、遠心力と圧力がバランスするように中心部の密度が掘れることになり、結局台風様の渦に結果することも示された。また大きなドリフトを引き起こすほどに大きいポテンシャルは、中心部の密度の薄いところに向かってイオンが流れ込むことにより、イオンリッチとなる事による。異常E x Bの存在を明らかにしたことが評価されてXXVII ICPIG2005(電離気体現象国際会議2005年7月、オランダ、アイントホーフェン)で「Best Poster Award」を受賞した。
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