研究概要 |
本年度は,既存の内部コイル型誘導結合プラズマ(ICP)支援スパッタ装置を用いて,Ti酸化膜のMgO単結晶基板上への成膜・評価を実施すると共に,Ti及びMgターゲットを有しIn-situで切り換えて成膜できる外部コイル型ICP支援スパッタ装置を設計・製作した. 内部コイル型ICP支援スパッタ装置によるTiO_2薄膜のMgO単結晶基板上への成膜・評価では面内2方位を有するルチルTiO_2が配向成長することを明らかとした.MgO(100)基板の格子はアナターゼ型TiO_2に格子整合するとの報告が見られるが,内部コイル型ICP支援スパッタ法では高密度プラズマ生成と共に,ターゲットセルフバイアス電圧の低下が生じることから,通常は結晶化が困難とされる高温安定相のルチル型結晶の成長が実現できたと考察された.また,成膜後に酸素大気中でアニール処理を行った試料では,TiO_2膜とMgO基板の界面にMgTiO_3セラミックス層ができることが判明し,アニール時のTi, Mgの拡散が一つの課題であることが明らかとなった.更に,酸化に寄与する酸素の挙動に関しては共同研究者の進藤春雄教授と連携しながら進め,静電プローブ測定の結果を基に考察した結果,高密度ICP支援スパッタにおいて原子状酸素ラジカルが効率よく生成されており,且つ酸素負イオン密度も高いため,酸素負イオンが結晶成長へ与える運動論的効果を今後詳細に調べる必要があることがわかった.これらの成果はJapanese Journal of Applied Physics誌にて公表済み並びに公表予定である. 外部コイル型ICP支援スパッタ装置の製作は,本年度の設備備品費を使用して行った.既にIn-situで切り換えできる2基のターゲットを有するスパッタ真空容器が完成し,現在ガス導入系及びICP生成用外部コイル部を製作中である.基板ステージ部やRF供給部の整合回路などは平成17年度の予算を使用して整備し,平成17年の8月を目処に成膜実験に入る計画である.上記の内部コイル型装置での知見を生かし,本新規装置でTiO_2膜の良好な結晶成長を試みる.
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