研究概要 |
[Ru(CN)_5NO]^<2->、[Fe(CN)_5NO]^<2->および[Mn(CN)_5NO]^<3->における、光誘起準安定状態と光遷移過程:光誘起準安定状態の寿命が長く、スイッチング素子、記憶素子の候補として研究される物質である。拡張基底関数系を用い、CASSCF、MRSDCI+Q計算により次のことがわかった。1)基底状態の構造は3物質ともにNOは金属に対してNからon topに配位する。2)準安定状態は3物質とも電子的基底状態において、NOがside on及びOの側からon topに配位する構造のlocal minimaである。3)Ru錯体の準安定状態の寿命がFeより長い理由はRuとNO間の共有結合性がFeの場合より強く、その結果、前者のポテンシャル障壁が高くなることによる。4)Fe、Ru錯体では低い励起状態のポテンシャル面が擬交差、円錐交差をを多数含み、これらが準安定状態への失活経路となる。5)Mnでは準安定状態が観測されないが、これは準安定状態への失活を導く経路が無いことによる。 [Ru_3O(CH_3CO_2)_6(bzpy)_2CO]^<n->(n=0,1,2)の安定構造ならびに電子構造についての理論的研究:H以外の全原子にモデルコア-ポテンシャルを用い、Ru,中心のO、COにはDZ+P基底、他には最小基底を用いた。n=0の中性体からn=1,2の還元体の安定構造を求めた。この際、Ru_3O(CH_3CO_2)_6部分はmbpy錯体での構造を仮定し、bzpyの中心部に対する相対的構造(bzpyのNとRu結合におけるbzpy分子面とRu_3とのなす角)を調べた。n=0,1ではbzpyが90度で配位する構造が安定で、n=2の場合は90度、0度がほぼ同じエネルギーで安定となり、実験から二つの構造が予想されたことを支持する。n=1では主にコアー部分に付着するが、n=2では主にbzpyが負に帯電することになる。
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