パルス磁場勾配を持つパルスEPRに導入することを目的として、パルス磁場駆動電源、共振器、低温クライオスタット、光照射装置の開発を行い、下記の成果をあげた. 1.パルス磁場勾配発生用四重極コイルの設計と試作.効率よく均一な磁場勾配を発生する四重極コイルを設計した.コイルが発生する磁場の空間分布を計算する数値シミュレーションプログラムを作成し、コイルの大きさや形の最適化を行った.実際に試作した磁場勾配発生用四重極コイルを用い、定常電流を用いた磁場強度を測定を行って、シミュレーション結果と良い一致を得た。2で試作したパルス発生器でコイルを実際に駆動し、生成したパルス磁場を測定した結果は、立ち上がり立下りは約20nsとなり、パルスEPR測定に十分な性能を得た. 2.パルス磁場駆動電源の試作.コイルを駆動しパルス磁場を発生するための高速大電流の電源装置を設計し、試作した.駆動電源単体の性能として10ns以下のスイッチングスピードを得ることができた. 3.EPR共振器の開発.パルス磁場を試料に効率的に照射できる誘電体共振器を開発した.種々の誘電体材料を検討し、常磁性不純物の少ない、ほぼ実用になる共振器を開発できた 4.低温クライオスタットの設計と試作.低温でのパルスEPR測定用のヘリウムクライオスタットを設計し試作した.このクライオスタットでは誘電体共振気を用いて結合度を過結合から疎結合まで容易に帰ることが出来、また、試料交換も容易に出来る. 従来に比べ3〜4倍の効率の光照射装置を開発した. 以上、XバンドESR装置で従来の報告より一桁高速のパルス磁場勾配を生成することに成功し、高速のパルス磁場勾配を実用化するのに基本的な性能を達成した.今後試作した装置を位相操作以外にも飽和測定、拡散測定などへ応用することも試み、パルスEPRの応用範囲を大きく広げることが出来ることを示したい.
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