研究課題
タンパク質の構造解析を行う上で、現在解決すべき課題は「タンパク質を結晶化し、質の良い結晶を作ること」である。解析技術が飛躍的に進歩した一方、結晶作成の分野では、それに匹敵する革新的な改良はまだない。タンパク質の結晶化には、決まった手法は存在せず、熟練と経験を積んだテクニシャンの技量により、成果が決定されている。タンパク質の種類に応じた沈殿剤の種類と濃度、緩衝溶液の種類と濃度、結晶化の温度、およびタンパク質の濃度、純度など、天文学的なパラメーターの中から適する組み合わせを選べだし、結晶化を進める必要がある。質の良い結晶を作るためには、さらに結晶化条件を厳選する必要がある。本研究では、弱い紫外線を短時間照射することにより、核形成が起こらない程度の低過飽和溶液(準1安定状態)中に、結晶核が形成されることを明らかにし、その機構について検討した。その結果、・X線結晶構造解析によって、光照射により得られた結晶は、定法により得られた結晶と格子定数が同じである。・150〜300Wのキセノンランプ光をリゾチームの過飽和溶液に30秒程度照射すると結晶化が促進されるが、長い時間照射すると結晶は出現しにくくなる。・核形成が促進される照射時間(30秒以内)では、酵素活性は低下しない。酵素活性の低下は2光子過程で起こる。・一光子吸収により生成した中間体が核形成促進に関与していると考えた。リゾチーム以外のタンパク質として、ソーマチン(Thaumatin)を用い、やはり光照射により、核形成が促進されることを示した。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (4件)
Crystal Growth and Design 5
ページ: 461-465
Chemical Physics Letters 404
ページ: 300-303
J.Photochem.Photobiol. : Chemistry (印刷中)
Crystal Growth and Design (印刷中)