研究概要 |
平成17年度は,平成16年度に製作したピコ秒時間分解赤外吸収測定装置を用いて,光励起された二量体モデル分子系(エキシマー)のピコ秒時間分解赤外吸収スペクトルを測定し,量子化学計算を併用して励起電子と分子振動の相互作用を解明することを行っている.また,この課題と密接に関連する共役π電子系を有するモデル分子のイオン種について,赤外スペクトルの測定を行い"電子-分子振動相互作用"を解明した.以下,具体的に述べる. (1)パラシクロファン系分子の合成とピコ秒時間分解赤外吸収スペクトルの測定 ビフェニルやナフタレンがアルキル鎖で架橋されたパラシクロファン系分子の合成を行い,そのピコ秒時間分解赤外吸収スペクトルの測定を行っている.また,測定された赤外吸収スペクトルを解析するために,分子軌道法計算を用いて電子励起状態の構造最適化と振動数計算を行った.現在のところ,質の良い赤外スペクトルの測定には至っていないが,今後,装置の性能アップと積算時間の増加により,S/N比の良い赤外スペクトルを得て,"励起電子-分子振動相互作用"について解析する予定である. (2)共役π電子系分子のラジカルイオンとジイオンの赤外吸収スペクトルの測定と電子-分子振動相互作用の解析 ナフタレン,アントラセン,ビフェニル,ターフェニルなどの共役π電子系分子のラジカルアニオンとジアニオンの赤外吸収スペクトルを測定し,密度汎関数法計算を併用して,"電子-分子振動相互作用"を詳細に解析した.共役系の大きさが"電子-分子振動相互作用"に与える影響についても知見を得た.
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