研究概要 |
本研究は,規則的ハニカム細孔を持つメソポーラスシリカ(MCM-41,SBA-3等)を担体として担持Mo触媒を調製し,Moの光励起並びにオレフィンメタセシス反応を行い,励起過程の構造変化・生成したメタルカルベンの寿命・失活過程等に関する知見を得るものである。実施1年目となる本年は(1)メソ細孔シリカへのMo種の高分散担持と構造解析,(2)1-ブテン光メタセシス反応中の構造解析,を中心に検討してきた。 (1)五塩化モリブデンを前駆体とする事でメソ細孔壁上にMo種を高分散担持する事ができた(Mo/MCM-41)。またメソ細孔シリカ調製時に,アンモニアヘプタモリブデートを同時に混合する事で,メソ細孔壁内にMo種を組み込む事ができた(Mo-SBA-3)。両触媒とも透過型電子顕微鏡(TEM)及びX線回折(XRD)測定より,メソ細孔の規則性が維持されており,また紫外可視吸収スペクトル(UV-vis)やRaman分光法,X線吸収スペクトル(XAFS)の解析からMo種は高分散していることが判明した。 (2)(1)で得られたMo触媒に紫外光照射下で1-ブテンを流通させたところ,メタセシス反応が進行した。いずれの触媒でもクロスメタセシス反応が進行していたが,その選択性は異なっていた。また,触媒の失活速度も含め違いが見られた。この光触媒作用の差異を検討するために,in-situ XAFS測定をPFにて行ったところ,Mo/MCM-41ではMoクラスターが還元される際に,孤立化していく形で失活していたのに対し,Mo-SBA-3ではMo種が還元されながらも担体のシラノール基と再結合する形で失活していたという事が判明した。 担体を含めた活性サイトの局所構造が,光励起種のメタルカルベンの反応過程に影響している事を直接的に見いだした。
|