研究概要 |
I.エチレンオキシドの鎖が親水性基として作用しているメカニズムの解明 エチレンオキシド鎖の最も単純なモデル化合物として,CH_3OCH_2CH_2OCH_3(1,2-ジメトキシエタン)を選んで,これと水との2成分混合物を全濃度領域にわたって赤外分光法とラマン分光法で調べた.その結果,水濃度の増加に連れて,1)C-H伸縮振動バンドが高波数側にシフトして,2)吸収強度が減少し,すなわち,C-H…H_2Oで示される相互作用が起きていることを確認できた.また1,2-ジメトキシエタンのモル分率が0.06まであたりの低い濃度領域で水の分極が普通の水の分極よりも大きくなることがわかった.このこととCH基のスペクトルの変化とから,この濃度領域では水とメトキシ基の酸素との水素結合が非常に強く,かつC-H…H_2Oの相互作用をふくむ水和クラスターが形成されていると考えられる. II.水・水素結合テータベースを利用した,Antifreezeprotein RD-1のCH基と水の相互作用解析 水溶液中のタンパク質は,さまざまな機能を発揮するミセル水溶液であり,たとえば不凍タンパク質と呼ばれる一群のタンパク質は水の融点を下げる.これはまた,ポリエチレングリコール水溶液にも見られる共通の現象であり,単に凝固点降下として計算される値を遙かに越えるにもかかわらず,よくわかっていない.本研究ではこの原因が,C-H…H_2O相互作用による水分子の分極の低下,水素結合性の低下にあるものと予想して,Antifreezeprotein RD-1の結晶X線回折データより得られた水・水素結合データベースより,水とRD-1に含まれる表面に露出しているCH基との相互作用を解析した.その結果,RD-1のアミノ酸組成はGly, Alaが圧倒的に多く,しかもこのタンパク質はunfolded chainがぼとんどで,水とCH基がC-H…H_2Oで表される相互作用をしていることを確かめた.今後さらにこの問題を実験,解析していく.
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