研究概要 |
エチレンオキシドの鎖が親水性基として作用しているメカニズムの解明 昨年度選んだCH_3-(OCH_2CH_2)n-OCH_3[I]のn=1に続いて,n=2,4のエチレンオキシド鎖モデル化合物と水との2成分混合物を全濃度領域にわたって赤外分光法とラマン分光法で調べた.その結果,n=2,4でもn=1と同じく,水濃度の増加につれて,1)C-H伸縮振動バンドが高波数側にシフトして,2)吸収強度が減少し,すなわち,C-H【triple bond】OH_2で示される相互作用が起きていることを確認できた.また[I]のモル分率が0.06まであたりの低い濃度領域で水の分極が普通の水の分極よりも大きくなりその後は[I]の増加にともなって小さくなる.ことがわかった.このこととCH基のスペクトルの変化とから,この濃度領域では水とメトキシ基の酸素との水素結合が非常に強く,かつC-H【triple bond】OH_2の相互作用をふくむ水和クラスターが形成されていると考えられる.n=4ではこのような水和クラスターの形成に相当する変化は見出されなかった. n=1,2,4のいずれの化合物についても得られた重要な結論は,このような低濃度での水和クラスターの形成領域をすぎると,水の水素結合が溶質の濃度増加にともなって減少することである.従来言われてきたアルキル基の周りでの構造化した水の形成は全く見られないどころか,逆に水分子間の水素結合が解離するか,あるいは弱くなることが実験的に明確に示された.これは上に述べたC-H【triple bond】OH_2の形成と非常によく対応するもので,本研究の結論として,エチレンオキシド鎖の親水性基としての作用に,C-H【triple bond】OH_2形成が関与していることを明らかにできた.エーテル酸素と水分子の水素結合の形成が確認できるので,水分子はC-H【triple bond】O(H)H【triple bond】O<のように二官能基的な水素結合を形成すると結論できる.
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