研究概要 |
本研究は、蛍光検出型ストップトフロー分光測定装置および時間分解ESR装置を用い、より生体系に近く光学的な透明性が低い懸濁液中において、複数の天然抗酸化剤が含まれる多成分系における活性酸素種に対する抗酸化過程の速度論的研究を行い、その詳細を明らかにすることが目的である。本年度は以下の研究を行った。 ・本研究で用いるフェノキシルラジカル(PhO・)を合成した。 ・現有のストップトフロー分光測定装置に蛍光検出ユニット(ユニソク・本課題物品費で購入)を設置し、蛍光検出による反応速度測定を可能とした。このストップトフロー分光測定装置で、コーヒー酸類縁化合物やエダラボンの抗酸化反応について、溶媒・温度等同条件で吸光度法と蛍光検出法の比較・特性把握と測定条件の抽出を試みた。吸光度法では充分なデータが得られ反応速度が容易に求められたのに対して、PhO・の蛍光検出では蛍光が微弱で解析可能な強度が得られなかった。今後、PhO・還元体のフェノール及び抗酸化剤の蛍光による検出を検討し、有機溶媒系・ミセル溶液系・二分子膜溶液系で反応速度測定を行う。 ・既存のNd-YAGレーザーに第4高調波発生ユニット(エクセルテクノロジー・本課題設備備品費で購入)を設置し、266nmのレーザー光励起による過渡吸収・時間分解ESR測定が可能となった。 ・266nm光励起により、他の化学種の妨害を受けることなく、天然のα,β,δ,γ-トコフェロール(ビタミンE)の直接光分解で生成する中間体ラジカルの明瞭な過渡吸収スペクトルの観測に成功した。 ・過酸化水素(H_2O_2)水溶液を266nmレーザー光により光分解し、ヒドロキシルラジカルの生成について過渡吸収測定を行った。今後、アルコールやDMSO溶液中でH_2O_2を光分解し、HO・から二次的に生成する溶媒由来ラジカルの生成・減衰のダイナミクスを観測する。
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