研究概要 |
近年の分光学的手法の発展に伴い,気/液界面膜の分子レベル構造解析は精力的に展開されてきたが,生体膜やエマルション等の複雑な分子組織体の基本骨格をなす液/液界面膜の構造解析は,その適用の困難さから大幅に立ち遅れている本研究では液/液界面膜構造解析の進展を図り,将来的な生体膜等の構造と機能の相関解明を界面物理化学的側面から展開することを目指している. 今年度は,油溶性フルオロカーボン(FC)アルコールであるペルフルオロデカノール(TFC100H)とハイドロカーボン(HC)アルコールであるイコサノール(C200H)混合系およびTFC100Hとハイドロカーボンを疎水基に持つ陽イオン界面活性剤(DTAB)混合系のヘキサン/水界面ギブズ膜に関して,界面張力測定およびシンクロトロンX線反射率測定による膜状態とその構造解析を行った. 1界面張力測定(マクロ研究) 界面張力を25℃,大気圧下において溶液全濃度と混合物組成の関数として測定し熱力学理論解析を行った.TFC100HとC200Hは凝縮膜において非混合であるのに対し,TFC100HとDTABは親水基間の強いイオンー双極子間相互作用のため,FC-HC疎水基間の弱い相互作用を凌駕し,混合凝縮膜を形成することが示された.さらに,凝縮膜における分子密度は凝縮単分子膜で予想されるよりも約2倍程度大きく,凝縮膜が自発的に積層した多重膜状態にあることが示唆された. 2X線反射率測定(ミクロ研究) アメリカ・ブルックヘブン国立研究所内放射光施設(NSLS)にて,鏡面条件下でのX線反射率測定を溶液全濃度一定下で温度の関数として行なった.TFC100H-DTAB系に対して得られた反射率曲線には,膜厚に対応したピークが観測されその位置は凝縮単分子膜の約2倍程度の厚みに対応し,多重膜であるとの結論を得た.また吸着膜の電子密度はTFC100Hのみからなる凝縮膜での値より低く,この状態でTFC100HとDTABが混合した凝縮膜であることを直接的に証明することに成功した.
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