研究課題
基盤研究(C)
イオン液体とは常温で液体状の有機塩である。極性が高く低粘度である上に、分子構造を少し変えることによって物性を変えることができるため、デザイナブル液体として多方面にわたって注目を浴びている。イオン液体が常温で液体である理由は、複雑な分子構造とイオンまたは特定の官能基(あるいは原子)間の相互作用にある。すなわち、イオン間に働く力が静電的なクーロン力だけでなく、水素結合があることが無機の溶融塩と大きく異なる点である。本研究では、その複雑な相互作用を解明することが目的である。近年、我々はX線反射率測定を用いてアルコール水溶液の表面構造を研究したところ、表面構造とバルクの構造には密接な相関があることがわかった。そこで、本研究では表面構造研究からイオン液体中の相互作用を理解することを試みた。平成16年度は現有のX線反射率測定装置でイオン液体[bmim]BF4の測定を行った。その結果、最高角1.8度で層構造を示唆する強度の増加が観測されたが、表面構造を決めるためには、さらに高角度の反射をとらなければならないことがわかった。ところが反射強度は入射角の-4乗で減衰するので、現有のX線源では強度が弱すぎて、測定することができない。そこで、平成17年度はは今まで使っていたGe111モノクロメータの代わりに人工多層膜モノクロメータに変更するために、反射率測定装置の大幅な改良を行った。その結果、従来の25倍の強度を得ることができた。液体グリセリンを使って性能評価したところ、従来検出器にイメージングプレートを用いて1週間かかっていた測定が、シンチレーションカウンタを用いて2時間で測定することが可能になった。今後は改良した装置を用いてイオン液体表面の構造研究を行う予定である。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (6件)
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