研究概要 |
1.リボ核酸の気化とマススペクトル ウラシルは300℃で分解する厄介な化合物である。チミンの融点は316℃であるため、まず最初、チミンの気化を試みた。真空ラインを回転真空ポンプで真空にし、ピラニー真空計で真空度(5x10^<-3> Torr)をチェックした。ウラシルの熱分解生成物(450℃)のマススペクトルはイオンピークm/z17(s),18(s),26(m),43(m)を示した。それぞれのイオンピークはアンモニア、水、アセチレン、イソシアン酸と思われる。親分子のイオンピーク(m/z112)は観測できなかった。ウラシルの熱分解は主にアセチレンとイソシアン酸に分解すると予想される。 試料管にチミン水溶液を入れ、製作したセパレーター(分離用ガラス器具)に直結した。セパレーターの中心はT字管になっており、一方は水分を分離しトラップへ、他方は質量分析計のイオン室に直結している。現在、セパレーターにヒーターを巻きつけ、ウラシルのマススペクトル(m/z112)を観測したが、非常に弱かった。チミンの熱分解生成物(500℃)のマススペクトルはイオンピークm/z17(s),18(s),40(m),43(m)を示した。これらのイオンピークはそれぞれアンモニア、水、メチルアセチレン、イソシアン酸と思われる。製作したセパレーターでチミンのマススペクトルを観察したが、親分子のイオンピーク(m/z126)も非常に弱かった。 2.リボ核酸(ウラシルとチミン)の理論計算(MP2/6-31G(d,p)) ウラシルとチミンの分子構造を検討するため、Gaussian98プログラムのMφller-Plesset理論の2次摂動(MP2)を利用し、基底関数6-31G(d,p)を用い、最も安定な構造パラメーターと回転定数を計算した。ウラシルの分子構造は平面分子であった。その回転定数はA=3879.02、B=1999.23、C=1319.28MHz、Rayの非対称パラメーターはκ=-0.4687であった。a型とb型遷移が期待され、その特徴は回転定数Cの2倍(2640MHz)ごとにマイクロ波吸収線が現れると期待される。一方、チミンの分子構造はメチル基の2つの水素原子のみが面外に位置するCs対称を有する分子であった。その回転定数はA=3197.72、B=1394.66、C=976.92MHz、κ=-0.6237であった。この分子の特徴ある吸収線はウラシルと同様に回転定数Cの2倍(1954MHz)ごとにマイクロ波吸収線が現れると期待される。購入した2逓倍器(26.5から40.0GHz発信用ダブラー)を15V定電圧電源用い、既成のシンセサイザーの周波数を2逓倍し、改良した100kHz矩形波Stark変調型分光器を用いウラシルとチミンの分光系は準備できた。 3.マススペクトルでウラシルとチミンの気化最適条件を見つけている。
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