研究概要 |
MCT検出器および分光器を更新した結果,検出可能波長の上限を従来の13μmから27μm付近まで引き上げることができた.NO分子の高リュードベリ状態8sσからのレーザー誘起自然放射増幅光を観測し,その回転解析を試みた.この状態は72350cm^<-1>に位置し,前期解離性を有するため,これまで蛍光は報告されていない.一方本研究において,27μmおよび14μm付近にASEを観測することができた. 27μm ASEバンド このバンドシステムは,8sσ→7pσに帰属される.この発光に関し,次のような特徴が見られる. (1)8sσ→6pσ(6.6μm),つまりΔn=+2の遷移は観測されない. (2)8sσ→7pπ(23.5μm)は観測されない.nsσ→(n-1)pπ遷移の欠如は,低いnについても認められており,s-d混合の結果であると解釈される. (3)7pσからのcascade ASEは検出できない.これは7pσ状態の前期解離性のためだと推察される. 14μm ASEバンド このバンドシステムは,8sσ→6fに帰属される.この遷移はΔ1=±1に抵触し,基本的には禁制遷移である.遷移モーメントは8sσと近接するdσ状態との混合によってもたらされる.また回転解析の結果,6f状態の回転量子数L=+3への遷移が主であることが判明した. 以上の結果は,分子の高励起リュードベリ状態間ASEが将来的にTHz領域のパルス光源として有用であることを示唆するものである.すなわちASEは極めて光子密度の高い指向性を有する準コヒーレントな光であり,連続した周波数可変性は望めないものの,分子の振動回転準位を利用することで飛び飛びながら周波数を選択することができる.
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