研究概要 |
蛍光相関分光法(以下FCS)は単一分子レベルの蛍光分子の検出法として、物理化学、生化学、生物理などの分野で注目されている。本研究はFCS法を初めてゼイライト結晶内の吸着分子の光物理過程および運動状態の解明に適用し、これを明らかにすることをめざしている。FSCは光学顕微鏡を利用して直径0.4μm程度の領域を観測することが可能であり、3-5μm以上のサイズを持つゼオライト結晶内部における分子の情報を得ることが可能と考えている。これまでゼオライトへの分子の吸着状態および吸着分子の運動状態の解明は、検出感度の制約のために、ひとつひとつの粒子ではなくバルクとしての粉末を対象として行われ、しかも1粒子に対する担時量が著しく高い実験条件で行われた。その結果、吸着状態や拡散運動自体が他の吸着分子の影響を受けること、観測される物理量がアンサンブル平均となってしまう欠点があった。FCSにより単一分子レベルの検出を行うことにより、系間交差などの分子の光物理過程および細孔内および細孔間拡散などに関する情報が他の吸着分子の影響なしに観測できることは大きな利点である。これまで、NMR緩和時間測定法、パルス暢勾配NMR法、中性子非弾性散乱法などの方法によりて測定された拡散係数のデータは相互の一致があまりよくなかった。FSC法によりこれまでのデータの妥当性を検証することが可能である。現有の倒立型顕微鏡をもとにして現有半導体レーザー(405nm,532nm)、CCD付分光器、アバランシェフォトダイオード、オートコリレーター等を組み込んで、蛍光相関分光装置を製作し、データー取得のためのプログラムを作製した。これまで、有機分子を担持したゼオライト粉末の蛍光スペクトルの測定、および色素担持ゼオライト結晶の蛍光顕微鏡観察に習熟してきたが、単一分子レベルでの測定の経験がなかったので、まず非常に低担持量(1結晶あたり1000〜10000個程度)の蛍光色素の検出を試みた。
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