本研究はFCS法を初めてゼイライト結晶内の吸着分子の光物理過程および運動状態の解明に適用し、これを明らかにすることをめざした。FSCは光学顕微鏡を利用して直径0.4μm程度の領域を観測することが可能であり、3-5μm以上のサイズを持つゼオライト結晶内部における分子の情報を得ることが可能と考えた。これまでゼオライトへの分子の吸着状態および吸着分子の運動状態の解明は、検出感度の制約のために、ひとつひとつの粒子ではなくバルクとしての粉末を対象として行われ、しかも1粒子に対する担時量が著しく高い実験条件で行われた。その結果、吸着状態や拡散運動自体が他の吸着分子の影響を受けること、観測される物理量がアンサンブル平均となってしまう欠点があった。FCSにより単一分子レベルの検出を行うことにより、細孔内および細孔間拡散などに関する情報が他の吸着分子の影響なしに観測できることは大きな利点であると考えた。 実験装置の開発を行い、通常の溶液系では実験可能なことがわかったが、ゼオライト単結晶を用いた実験では蛍光相関分光法の適用できる時間領域と比較して、吸着分子の運動が著しく遅いため、測定上の困難に直面した。そこで、観測時間領域を大きくして、一つの分子の動きを追いかける単一分子計測に実験法を改良することによってはじめて実験データを得ることができた。
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