研究概要 |
最近、コンピュータの計算能力の向上とともにab initio動力学法などの直接動力学法が広く用いられるようになってきた。しかしながら、統計的に有意なトラジェクトリ計算を行おうとすると、低い水準のab initio計算に甘んじなくてはならないなどの問題点がある。そこで、われわれはab initio計算の結果を用いつつ、効率的にポテンシャル面を生成する方法として局所内挿法に基づくIMLS/Shepard法を提案してきた。この方法では、従来法で必要だったab initio法による微分計算を用いないですむ方法であり、そのため、最新のab initio法と組み合わせ可能であるという利点がある。本研究では、大規模系を取り扱えるように、IMLS/Shepard法を拡張することを目的としている。最終的には分子力学法との結合により、大規模系の記述を目指すが、本年度は5-6原子系への拡張を目指し、内部座標の冗長性を取り除くためのプログラムを開発した。内部座標として原子核間距離をとると、5原子以上の場合には冗長性があるので、特異値分解法を用いてそれを取り除いた。現在テスト計算中である。また、4原子系への応用として、H2+H2,OH+H2の反応の系のポテンシャル面の決定を行った。OH+H2系では、2,000点程度のサンプリングで、参照したポテンシャル面の断面積を再現する結果を得ることができた。OH+Clの系については、複数枚ポテンシャルの表現の一例として、基底状態・励起状態、透熱結合の当てはめを行った。現在、このポテンシャル面を用いた非断熱遷移を考慮した動力学計算が共同研究で進行中である。
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