研究課題
著者らはこれまでにケイ素、ゲルマニウム、ケイ素/ゲルマニウム混合型不飽和3員環化合物を鍵前駆体とし、骨格が種々の高周期14族元素からなる芳香族化合物の合成を検討してきた。これまでにシクロプロペニリウムイオンのケイ素及びゲルマニウム類縁体の合成に成功し、それらが2π電子系芳香族化学種であることを実験的に明らかにした。一方で、シクロブタジエンジアニオン高周期元素類縁体は大きく折れ曲がった4員環を持ち、その構造化学的特徴から形式的に6π電子系でありながら非芳香族化学種であることも明らかにしている。本研究では、さらに環サイズの大きい5員環6π電子系化合物であるシクロペンタジエニドイオンの骨格元素の一部を高周期14族元素で置換した類縁体の合成を検討し、その構造、芳香族性について検証した。既に合成に成功している炭素=炭素二重結合及びケイ素=ゲルマニウム二重結合を含むシクロペンタジエン類縁体を、カリウムグラファイトで還元的に処理することによりジシラゲルマシクロペンタジエニドイオンを得ることに成功した。リチウムを対カチオンとするもので単結晶X線構造解析に成功し、リチウムがη^5配位した接触イオン対であることを明らかにした。ジシラゲルマシクロペンタジエニドイオンにおける5員環骨格内の結合は、前駆体の対応する結合と比較すると単結合は短縮し、二重結合は伸張しているのが認められた。即ち、陰電荷の非局在化を示唆する構造変化であり、芳香族性を発現していると考えられる。実際、炭化水素(トルエン)中における^7Li NMRにおいてLi核としては高磁場領域の-5.4ppmにシグナルが観測された。即ち、5員環6π電子系環電流による遮蔽効果によるものと考えられ、ジシラゲルマシクロペンタジエニドイオンの芳香族性を実験的に観測することができた。
すべて 2005
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