研究課題
筆者らは骨格元素が種々の高周期14族元素からなる芳香族化合物の合成を検討し、シクロプロペニリウムイオンのケイ素及びゲルマニウム類縁体の合成に成功し、それらが2π電子系芳香族化学種であることを実験的に明らかにした。一方で、アルカリ金属イオンを対カチオンとするシクロブタジエンジアニオン高周期元素類縁体は、大きく折れ曲がった4員環を持ち、その構造化学的特徴から形式的に6π電子系でありながら非芳香族化学種であることも明らかにしている。本研究では、非芳香族化学種であるシクロブタジエンジアニオンケイ素類縁体を遷移金属の配位子として活用することを試みた。その結果、Co、Ru、Rh錯体等を合成することに成功し、その分子構造を単結晶X線構造解析により決定した。アルカリ金属塩が折れ曲がり構造を持つ非芳香族化合物であったのとは対照的に、遷移金属上におけるシクロブタジエンジアニオンケイ素類縁体はη^4型で遷移金属に配位し、平面性の高い4員環構造を持つことが明らかになった。これは、シクロブタジエンジアニオンケイ素類縁体のアルカリ金属塩ではイオン性が強く、アニオン電荷を担う軌道の安定化のために4員環骨格ケイ素のピラミッド化、即ち4員環の折れ曲がりが引き起こされているのに対し、遷移金属錯体ではシクロブタジエンジアニオンケイ素類縁体からの供与性が大きく、且つ遷移金属からの逆供与も寄与するため、芳香族性配位子として振る舞っていると考えられる。また、シクロペンタジエニドイオンの骨格炭素のうち2個をケイ素に、1個をゲルマニウムに置換した類縁体を配位子とするFe及びRu錯体の合成にも成功し、それらの分子構造も単結晶X線構造解析により決定した。
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Angewandte Chemie, International Edition 46(印刷中)
Journal of Organometallic Chemistry 692
ページ: 10-19
angewandte Chemie, International Edition 45・10
ページ: 3269-3272